製作秘話その2
大会での余田話?からしばらくして、企画が正式に「ブルーインパルス」になったことを聞きました。今回も言い出しっぺになってしまったようです。スクールには「パイロット募集」のポスターが貼られていました。まずは人員確保ですか。
藤野がパイロットに求める条件は厳しいものでした。元から「無理」な企画と言うことで”お蔵入り”してた訳ですから、誰でもパイロットとして採用する訳には行かなかったのです。立山インパルスのパイロットとして採用する条件としては、次のことが求められました。
立山インパルスパイロット採用条件
1.テイクオフ技術が高いこと
仮装を着けて飛ぶため、安全を確保しながら通常どおりライズアップを行ってテイクオフ出来なければなりません。普段から安心感のあるテイクオフを実践しており、他人の評価も「あの人はテイクオフが上手い」と言われる者でなければなりません。3機同時テイクオフも想定されるので、この条件は外す事が出来ません。
2.ランディング技術が高いこと
テイクオフと同様の理由ですが、仮装を着けた状態でランディングするのは意外と大変なもの。経験者はおわかりでしょうが、ライディングが悪ければどんなに素晴らしいフライトを行っても演技を台無しにしてしまうこともあります。ましてや夏の獅子吼は、ライディング付近からサーマルが発生し、降ろしにくい条件になることがままありますし、空域による上昇・下降気流の差が結構激しい時間帯もありますので、確実なコントロールによるランディング技術を持った者でなければならないのです。
3.共同センタリングの経験があること
なぜ「共同センタリング」かと言うと、他機を警戒・観察しつつ同じ目的に対して協調しながら機体コントロールが出来るか?と言う点においてです。編隊飛行はソロフライトとは全く違います。速度や双方の間隔、高度などを可能な限り同調させる必要があります。ガグリングでタイトな旋回にも付いてこれるパイロットは大会以外ではなかなか見ることが出来ませんが、普段からそのようなコントロールを行っているパイロットである必要がありました。
4.機体を大胆に操作出来ること
機体を大胆に操作すると言うことは、機体の特性や限界点を見極められると言うことです。空中演技では、時に大胆な操作が必要になるかもしれません。その場合、「怖いからこれ以上は出来ない」と言う者に立山インパルスのパイロットは務まらない。「ここまでだったら大丈夫」と自分で判断出来る者でなければならないのです。
5.自分に自信を持っている者
飛行演技となると、どんなコンディションで行う事になるかは予想出来ません。危険な条件では勿論中止しますが、許容範囲内であれば実施される可能性が高い訳です。そのような不確定要素に対しても、「自分なら大丈夫」と強く思えるパイロットでなければなりません。これは「自信過剰」と言う意味ではなく、何事においても自身の知識や技術で対応出来る、「パイロット」に求められる最も重要な要素なのです。
立山インパルスのパイロットに求められる資質は厳しい・・・
候補として名前が上がったのは次のメンバー。
- 委員長の塚本さん:委員長だからと言うこともあるが、タンデムフライトを行えるだけの信頼感と技術がある
- 小林さん:練習熱心でグランドハンドリングも抜群に上手い。大会経験もあり、候補としては申し分ない
- 島倉さん:スクールスタッフとして培った技術があり、やはりタンデムフライトもこなすだけの信頼出来る技術を持つ
- 西尾さん:大会経験が豊富で基本的な技術はしっかりしている
- 早風さん:飛びにおいては意味不明な場合もあるが、基本的な技術は高いものがある
藤野の名前も挙がりましたが、演技全体を見ることとナレーションを担当することから早々に候補から外れました。
これでも人数は僅か5名。5機編隊を組もうとすればギリギリです。このメンバーにスカイフェスタ当日の都合(スケジュール)を確認すると、島倉さんと西尾さんの2名が都合をつけることが出来ないと言うことで候補から外れ、結局候補生として残ったのは塚本、小林、早風の3名のみになりました。
この3名がDOLPHIN FLYERになるまでの道程は遠い・・・
この3名を正式なパイロット候補生として企画を進めることになったのです。しかし、その道程は考えていた以上に困難なものでした。数々の問題が浮上し、訓練に明け暮れる週末を送ることになるのです・・・。