立山インパルスレポート
Report:藤野二佐
8月2日(土)
立山インパルス隊員は、事前に「隊員のしおり」を配布していたこともあり、集合時間の06:00(マルロクマルマル)には集合が完了。1名の現地直行を確認した後、車に分乗して移動を開始。途中、高岡組の2名と関沢さんとは小矢部サービスエリアで合流し、一路獅子吼高原へと向かいました。
獅子吼到着後は受付などの諸手続きを行い、09:00(マルキューマルマル)からの開会式へ向けて獅子吼山頂へ各自で移動を開始。藤野二佐、小林三佐、早風一尉の3名は機体を運搬するため車で山頂へ移動。しかし時間に余裕がなく、現着は開会式開始時間ギリギリになってしまいました。
開会式の様子
山頂は既に風が強く、西~南西5m以上が吹き込んでいました。とても飛べそうなムードではない中、多くの仮装参加者と共に、全員展示用ユニフォームに着替えての開会式参加。統一されたブルーのユニフォーム姿の隊員が整列する様は圧巻と言うべきか異様とも言うべきか?仮装大会の中でも既に異彩を放っているのが自身でも感じることが出来るほどでした。
開会式が終了した後はミッション1の実行。藤野二佐作成の「立山インパルス仮装演技の見どころパンフレット」を大会役員一人一人に配布。飛べないかもしれないので、少しでも演技内容を知ってもらうための作戦行動は無事完了。その後は機体組み立て、装備確認と点検、スケジュール確認、演技内容確認とブリーフィングを行い、展示飛行へ向けた準備をパイロット・クルー全員で行いました。
展開初日のブリーフィング
飛べそうもないと言うこともあり、仮装をテイクオフへ運んでのアピールを行うことになりました。立山インパルスの順序は6番目。機体にグライダーを接続しないで訓練時に行った様な仮装だけを使った展示飛行リハーサルを行うことになりました。スモークは3色の紙テープをとりあえず代用して対応することにしました。
他の仮装チームも多彩な作り物と衣装でアピールを行っています。大物やキャラクターなど、いつもながらのスカイフェスタらしい光景です。これで飛べれば言うことないんですけどね・・・。
藤野二佐はナレーションとBGMを同時に操作しながら全体をコントロールする必要があるため、事前に大会音響スタッフと機材のオペレーションについて打合せを行い地上演技に備えました。今日は人手がギリギリで写真も撮れない状態なので、スクール校長の関沢さんにビデオ撮影をお願いして演技の記録を取ることになっています。森岡一佐(司令)もWAF(女性空自官)も明日じゃないと来ないし・・・。
T-4
F-15(獅子吼スカイフェスタ9周年記念塗装)
順番が立山チームになり、いよいよ獅子吼での展示飛行演技開始です。無線でクルーに指示を出しパイロットも配置に付きました。BGMを入れてナレーションを行うのですが、パイロットがなかなか行進を開始しません。後で聞くとテイクオフではBGMやナレーションはほとんど聞こえないらしいですね。あまりにおかしいので、「進め」の指示は無線で行い演技がスタートしました。他の参加者も興味津々で見ていますが、我々は訓練どおり演技を行うだけです。離陸準備も完了し、模擬演技としてのデルタテイクオフ、スモーク、2ポイントターン、アウトブレイクターンを終えてパイロットは機体を担いで退場。クルーの退場も上手く決まり、会場からは大きな拍手が沸き起こりました。本来ならばこの後でF15のスクランブルがあるのですが、一旦終わる構成のため女性司会者のMCが入ってしまい急遽スクランブルを中止。ここで演技終了となりました。
演技の評判はすこぶる良く、誰からともなく「立山はやっぱり凄い」と言う声が漏れ聞こえて来ました。ありがたいことです。しかし、反省会では数々の問題・課題が指摘されました。BGMやナレーションが聞こえないことで最初のタイミングが掴めないこと。テイクオフの傾斜が予想以上で歩きにくいこと。パイロット・クルーともに緊張のせいで普段よりも準備に時間がかかってしまったこと。ハーネスのベルト類の装着にミスがあったことなど、実際に飛行しなくて良かったような事案が報告されました。これらに関しては、すぐに改善策を提示しました。クルーへの指示は全て無線で行うこと。準備手順は確実にチェックリストを用い、確認完了サインも大げさなアクションで行うこと。獅子吼のテイクオフでの行進に慣れること。これらを以後は実行することでミスを起こさないように注意喚起を行いました。
その後は風も弱まってきたため、「バーチカルレース」が開始されました。仮装にはまだ強めの風の中、選手は次々とテイクオフして競技に参加して行きました。昼過ぎには仮装も飛べるのでは?との情報で、12:45「ヒトフタヨンゴー」に演技を行うべく準備を開始し、獅子吼ならではの山頂レストランで昼食をとることに・・・。その間に風がパワーを増してしまいフライトはキャンセルとなりました。(バーチカルレースは成立)
15:00(ヒトゴーマルマル)まで待つも風は弱まらず、本日は下山することになりました。その影響でウェルカムパーティー開始時刻も早まり15:30(ヒトゴーサンマル)からパーク獅子吼横芝生広場で行われることが告げられました。パイロット・クルー全員で機材を収納し下山となりました。
パーティーでは本日競技を行った「バーチカルレース本日の表彰」が行われました。何しろ世界で初の競技内容ですから、今日表彰される選手も世界一と言うことになります。なんと、チャンピオンはちゃいさん(中村裕昭さん)でした。おめでとうございます。
暑い中、ビールを飲んだり大道芸人の芸を見たりいろいろ語り合ったりと、いつもながら楽しい時間を過ごすことが出来ました。
ウェルカムパーティーにて
本日の宿は定番の「白山青年の家」。塚本二佐(飛行隊長)からは「宿舎でミーティングを行う」との通達があったものの、みなさんお疲れの様子で入室するなり風呂へ直行する者、そのまま寝込んでしまう者など各自のペースで時間を過ごしました。その後も宴会組?と獅子吼山頂花火組とに分かれて行動し、それぞれが思い思いに楽しまれたのではないでしょうか?
明日も風の強い予報。可能性があるとすれば午前中。飛べれば良いのですが・・・。
8月3日(日)
6時に起床し天候を観察すると既に快晴。風はまだ弱いものの強くなる兆候が見られました。本日はフルメンバーでの展開なので、何としても飛びたいと言う隊員の思いが伝わってきます。07:30に朝食をとり、そのまま準備を終えてエリアへ向かいます。受付後はすぐに山頂へ移動。現時点では風も弱く飛行は可能。隊員、応援(撮影)組全員でブリーフィングを行い、演技手順や注意点について確認を行います。
展開2日目のブリーフィング
フリーフライトが可能になり、仮装も準備の出来たチームから飛ぶことになりました。時間と共に風は確実に強さを増すことになるため、主催者側も早く仮装を飛ばそうと進行を急いでいるのがわかります。機材一式をテイクオフへ運搬し、最終ブリーフィングを行いました。「急ぎのムードに呑まれず、訓練どおり演技を実施しましょう」と、隊員全員で意思確認を行い待機状態に入りました。
他の仮装チームは次々と飛び立って行きます。時折強さを増す風に翻弄され、なかなか飛べない仮装も見られます。立山インパルスは、テイクオフの大半のスペースを占有するためある程度の仮装がはけないと準備も出来ません。タイミングを見て小林三佐に演技可能であること、準備に入ることをテイクオフディレクターの岡田さんに伝えてもらい、いよいよ演技準備に入りました。機体を置くスペースが出来次第、該当する機体を運んで準備をしてもらう間にも風は強さを増して来るのを感じます。が、焦っても仕方ありません。あとは本当に訓練どおりやるだけです。
展示飛行直前の準備作業
いよいよ演技開始。BGMを流しナレーションを入れます。映画「バックドラフト」のサントラが流れる中、森岡司令の号令を合図にパイロットがウォークダウンを始めました。2番機の小林三佐がまず機体に向かうと、2番機クルーの堀田一曹、山本二曹が「整列休め」の姿勢から「気をつけ」の姿勢に。そして、小林三佐に向けて敬礼、握手と訓練どおり演技が進みます。1番機の塚本二佐が機体に向かうと東一曹、渡辺二曹が同様に演技を行います。3番機の早風一尉も機体に向かいます。清水一尉、中村二曹が演技を行います。全て訓練どおりです。藤野二佐のナレーションによるパイロット紹介、演技課目紹介が進み、その間にも準備が着々と進みます。クルーもビフォアテイクオフチェックを大げさなアクションで確実に実施しているのがわかります。1番機、2番機の順番で離陸準備完了のハンドシグナルがクルーから森岡司令に送られました。そして最後の3番機も離陸準備完了の合図。森岡司令から藤野二佐に「全機離陸準備完了」の合図が送られました。いよいよ離陸です。その時、全体の風が先ほどから比べると弱くなっています。絶妙のタイミングでした。BGMを「デンジャーゾーン」に変えて離陸指示を出します。
「Tateyama Impulse. Wind 230 at 8knots. Runway26 Cleared for takeoff. Go!!」
風は目測で8ノット、約4m/sでした。それでも3名のパイロットは合図と同時に機体を立ち上げてデルタテイクオフを見事に決めてくれました。さすがは選ばれた精鋭パイロット。テイクオフで見守る観客からも歓声と拍手が沸き起こりました。そしてすぐにスモーク展開。「スモーク、レディナウ!!」の合図と同時に3機の機体後部からスモークに見立てた紙テープが落下、後方にたなびきました。ここでもどよめきと歓声が沸き起こります。2ポイントターンへの編隊遷移は風が強く難しそうなので、そのままの位置取りで行うことをパイロットに指示し、「2ポイントターン、レディナウ!!」の合図と共に3機が同時に左90度ターンを行った時には再び拍手が沸き起こりました。ナレーションをしている私(藤野二佐)も興奮を隠せません。最後のアウトブレイクターンはテイクオフまでの距離が近いため、すぐに合図を送り全機180度ターンで離脱、全ての空中演技を終了しました。ナレーションによる「3名のパイロットに大きな拍手をお願いします」のセリフなど必要なかったと思えるほどに、会場からは大きな拍手が沸き起こりました。本当に感動しました。やれば出来るんだと思いましたね。
最後の演技、クルーによる「ウォークバック」も、森岡司令の号令によってキビキビとした動作で行進が行われ、観客に敬礼をして全ての展示飛行が完璧に終了しました。立山インパルス最高です!!
デルタテイクオフ直後のスモークON
2ポイントターン
アウトブレイクターン
クルーによるウォークバック
しかし、まだ終わりではありません。獅子吼高原スカイフェスタ9周年記念塗装を施したF-15を飛ばさなければなりません。これからスクランブル発進です。息つく間もなく「総員に司令。国籍不明機が防空識別圏に侵入。ホットスクランブル!!」とナレーションを入れ、サイレンとBGMの入ったCDで音出しします。で、藤野二佐がそのまま機体へ向けてダッシュです・・・。入れ替わりに2番機クルーの渡辺二曹がこちらに走る段取りです。これは昨日急遽決めたことなのですが、渡辺二曹も打ち合わせどおり演技を行ってくれました。
さて、私(藤野二佐)はと言うとダッシュで機体に向かう途中に演技でコケると言うことも考えていましたが、何とマジコケしました・・・(笑)。観客の方々から「頑張れ!!」とか「急げ!!」と声をかけていただき、場の雰囲気は最高潮です。機体に着いてからは急いで機材を装着して準備を行います。風は先ほどよりも強くなっていますが、スクランブルですから行くしかありません(笑)。全ての準備を終えて、クルーに離陸の合図を出してライズアップ。後に持っていかれるのはわかっていたので3歩くらい下がってスムーズにライズアップが完了。頭上確認をして無事にテイクオフ完了でした。離陸後は、左右翼端の紙テープをリリースしたのですが、左のテープがクリップに引っかかって上手く出ないのを修正している内にゴンドラに近付いたので左180度ターンでテイクオフ前に戻って観客に敬礼を行いました。多分誰も見てなかったみたいだけど・・・。
先に飛んだ3機もまだ浮いているので、せっかくだから4機で編隊を組んで飛ぶことにしました。条件も飛んでしまえば悪くなく、途中でサーマルで上げてからテイクオフ上空へ戻り記念塗装の下面をアピールしました。ちょっと高いのでスパイラル(弱め)で降下して更にアピール。これは見てくれたみたいですね。
ホットスクランブル
T-4とF15のランデブー
ランディングも問題なくスムーズに出来ました。パイロット全員が揃ったところで自然とそれぞれが握手を交わし、展示飛行の成功を喜び合っていました。全員の無事着陸をテイクオフに居るクルーに連絡し、私たちパイロットは一息つくことが出来ました。クルーもテイクオフでは全ての備品を片付けて一息入れていた様です。
何はともあれ、展示飛行が無事完了したのです。
その後幾つかの仮装が飛びましたが、更に風速が上がりフライト出来ない状況になってしまいました。3つの仮装が飛べなかったそうです。残念です。全部飛んで欲しかったですが・・・。
隊員と応援チームは山頂レストランで昼食&休息。風は弱まる気配を微塵も見せずに吹き続け、その日のフライトはキャンセルされました。
閉会式は16:00の予定。15分前に全員集合し、最後の演技に向けて最終訓練を実施しました。「立山インパルス」らしく、最後までキビキビとした演技で締めくくりたいと思っていたからです。森岡司令に最後の訓練の指揮を執ってもらい、全員ユニフォームに着替えて演技を確認しました。
最後の訓練
表彰式と閉会式が行われ、各部門の受賞チームを発表して行きます。ノーマル部門の優勝は、暑い中山頂広場で何度も何度も「アンパンマンショー」を行って、みんなを楽しませてくれたグランボレの学生さんたち。おめでとう!!そして、ラージ部門の優勝は、私たち「立山インパルス」でした。名前が読み上げられると森岡司令より号令がかかり、整列、番号、大会委員長への敬礼、賞品の授受・・・。全て訓練どおりです。最後に他の参加者に敬礼を行い、私たちの演技は完結しました。
式典中の隊員たち
表彰を受ける立山インパルス(代表で塚本二佐、藤野二佐が前列へ)
参加者に敬礼する立山インパルスとWAF
参加者全員で
暑い獅子吼の夏。恒例のスカイフェスタでの展示飛行を無事終えることが出来ました。制作段階からご協力いただきましたクラブ員の方々、また制作費の寄付に応じていただいた方々にこの場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。また、機体の調整や貴重なアドバイスをいただいた立山パラグライダースクールの関沢さん、若林さんにも感謝いたします。
応援してくれたみなさんと、そして何よりも仮装演技に参加してくれたパイロットとクルーに感謝いたします。本当にありがとう。
立山インパルスは、見る人に感動を与えるチームでした・・・。