2016年のJPAチャレンジリーグ、N2リーグは11月12・13日に茨城県のCOOエリアで開催された最終戦ですべての日程終えて決着しました。
N2リーグは1月の朝霧からスタートし、成立したタスクは12本。
チャレンジリーグは3月のCOOからスタートし、リージョナルステージ含めて成立タスクが24本となりました。
今回も、前回に引き続きリーグ戦に関して個人的な感想を書かせてもらおうと思います。
チャンピオン決定
2016年のチャンピオンに輝いたのは
- N2リーグ:星田真一選手 4799ポイント(5本計上)
- チャレンジリーグ:小田雅也選手 690ポイント(7本計上)
の方々です。まずはおめでとうございます。
このお二人はリーグ戦を引っ張りながら、結果的には
圧倒的な強さで最終戦まで駆け抜けた
と言う印象です。
チャレンジチャンピオン小田選手
JPAリーグの記録を見ると、小田選手がチャレンジリーグに登場したのが2015年シーズンからになります。初戦のCOOクロカンカップでは14名中11位と言う結果から始まっています。ご本人曰く
ぶっ飛び大王
だったそうですが、たくさん本数を飛んでいるイメージも確かにありますね。フリーフライトでも。初めて立山に練習フライトで来られた時も、確かぶっ飛んでいたような・・・?
そんな小田選手に何があったのでしょう?
機体だけじゃない何か
最初に目につく変化は
機体が変わったこと
です。2015年はION3で戦っていましたが、今シーズンはCarrera+です。
パラグライダーの競技において機体性能が大きく影響するのは当然ですが、だからと言って機体を変えれば勝てるのか?と言えばそうでもありません。ただ、ION3から比較すれば大幅な戦闘力アップだったと言うのは間違いのない事実でしょう。その戦闘力を生かすことができたとでも言えばよいでしょうか。
機体に関しては性能面のみが語られることが多いのですが、そこには操縦性や飛行中の挙動、感覚的な恐怖心など、乗り換えることで生じるメリットやデメリットが必ず存在します。自分のフィーリングに合っているのがベストですが、単に性能だけを指標として乗り換えてしまうと僅かな挙動も恐怖心として受け止めてしまい、本来のパフォーマンスを発揮できないことになってしまいます。
そう言った意味において小田選手はフィーリングが合っていたのかもしれませんし、あるいは乗りこなす努力をしたのかもしれません。
それ以上にいつも感心したのは
最初にテイクオフして行くこと
です。良い条件ならば当然かもしれませんが、少し渋い条件であったとしても
まずは空中で待機する
ことを実践していたように思います。これは出来るようでなかなか出来ないことです。特にチャレンジリーグの場合は
- 今出ても浮いていられないかもしれない
- スタートまで時間があるのでたくさん飛んでいられない
- もう少し条件が良くなってから出たい
と言う不安を抱いている選手が多いものです。その不安をどのように克服するかが重要になるのですが、少なくとも小田選手は
- 日頃からいろんなエリアに行って飛び
- 知らない空域を飛ぶことに慣れ
- 長い時間飛ぶことで機体にも慣れ
- 空中での観察力や思考能力を鍛えた
のではないか?と思います。そして、それ以上に勝つことへのこだわりや、チャンピオンになると言う意思(目的)をしっかりと持ちながらシーズンを戦った結果、見事目的を達成されたのでしょう。
700点満点でパーフェクト優勝を狙っていたそうですが、それにかなり近い690点でのリーグ優勝は素晴らしい結果だと思います。来シーズはN2リーグで戦うとのことなので、引き続き小田選手の活躍を見たいものです。ただ、N2リーグは百戦錬磨のツワモノたちがひしめいています。そう簡単には勝たせてもらえないと思いますが、自分らしく飛んでもらいたいと思います。
N2チャンピオン星田選手
星田選手がJPAリーグに登場するのは2008年のチャレンジリーグにまで遡ります。当時の記録を見ると機体はZULU explorerでチャレンジクラスの18位が年間での成績となっています。
その後2009年からチャレンジリーグのオープンクラスに参戦(2009年は46位)。2010年からはナショナルリーグにも参戦しています。
そして2014年にはN2リーグの年間優勝に輝いています。ですから、今回で2回目のリーグ優勝と言うことですね。
勝つべくして勝つ
今シーズンの星田さんは強かったです。まさに
勝つべくして勝つ
と言った戦い方でした。機体がBoomerang10と言うことで当然のように言われる方も中にはいるのですが、それはやっぱり違うと思います。機体性能は大きなファクターであることは否定しません。しかし、その性能を生かすも殺すもやはりパイロット次第なのです。その性能を認識し、どのように生かすのかを考えて戦わなければ、継続して勝ち続けることはできません。
それ以上に、星田選手クラスの実力者になれば周囲からもマークされますから戦いにくい面と言うのが必ず出てきます。無欲の勝利とか、無心で戦うとか、世の中には勝利の方程式について美しい言葉で形容されることが多いですが、やはりそんなに甘いものではありません。
勝ちにいかなければ勝つことはできない
のです。もちろん運などの不確定要素も影響しますが、最後は
自分との闘い
になって、自分の技量や判断や時にはカンなどあらゆる能力を総動員してレースを戦って結果を出す・・・。その時のわずかなほころびが勝利を手にできない要因となってしまうので、勝ちにいく場合には
負ける恐怖
とも戦わなければなりません。
これは私の場合ですので星田選手がそうだとは言えませんが、勝つことの難しさは身に染みてわかっているつもりです。
おそらく、そんな中で戦った結果N2リーグチャンピオン、グランプリの2冠を達成された星田選手は素晴らしい実力者であり、良きライバルであり、尊敬する人生の先輩でもあります。シーズン中に「昨年の私の背中を追っている」と言っていただいた時は嬉しかったですし、とてもありがたかったです。
その目標を見事達成された星田選手に心からおめでとうと言わせていただきます。
競技は楽しい
そうは言ってもパラグライダーのレースはとても楽しいですよね。勝ち負けだけではなく、いろんな要素を体験し学ぶことができる世界だと思っています。ただ、勝負の世界で考えれば、厳しい面も備えていると言うことであり、それを克服しなければ勝利は掴めないと言うことなのでしょう。
来年もチャレンジリーグ、N2リーグに参戦される選手のみなさんに言わせてもらえるならば
- 楽しむことが重要
- 普通に飛ぶこと
- 普段から普通をグレードアップすること
に努めてください。日頃できないことが競技の場でできるわけがありません。日頃の意識や飛び方で、競技の成績も大きく変わってくるでしょう。
ぜひ、来年もチャレンジリーグとN2リーグを盛り上げてくださいね。