超久しぶりの更新になりました。パラグライダー回顧録です。
今回は、NOVAから新しく出た話題の機体「PHANTOM」にちなみ、初代ファントムについて語ってみたいと思います。
PHANTOMってどんな機体?
ここで言う「PHANTOM」は、新しい機体ではなくて昔の機体のことを指します。
そもそも、NOVAがこのネーミングで機体を販売したことに反応したのは
それこそ超古参?パイロット
と位置付けられるくらいのベテランの方々ばかりでしょう。なぜならば、このPHANTOMが一世を風靡したのは1992年頃の話だからです。
では、簡単に昔のPHANTOMを見てみたいと思います。
※写真はイカロス出版社の「PARA WORLD1992年7月号・9月号」、「フライトギア92-93誌」より引用しました
ネットを探してもPHANTOMの画像が見当たらないんです。だから、元祖PHANTOMを知らない人は
「NOVAのPHANTOMって機体が元々あったらしいけど、俺たちはよくわからないしなぁ・・・」
とか思ってたでしょうし、逆に古い(失礼)パイロットにとってみれば
「最近の人は元祖PHANTOMを知らないから、それについて語ろうと思っても話が通じないんだよねぇ・・・」
と残念に思っていたんじゃないかと思います。
私も同様ですが、この手の話が通じる人は相当のベテランであることに間違いありません。PHANTOMを知ってるってことは1990年代前半にパラグライダーを既に始めていた方なのですから。
バリバリのコンペモデル
この元祖PHANTOMですが、今のPHANTOMとは違ってバリバリのコンペモデルでした。
そして、NOVAのフラッグシップモデルでもあったのです。当時のNOVAはコンペに凄く力を入れているメーカーの一つでしたから、当然と言えば当然でしたが。
テクニカルデータと共に書かれている宣伝文句を見ても
「今後のパラグライダーの主流、スピード・タスクに勝つためのギア。とりわけ高速時の性能が素晴らしく、トップクラスのペネトレーションを持つ最速PGの雄だ。」
と書かれています。この宣伝文句の通り、コンペではPHANTOMに乗る選手も多く見られましたし、Aチームでもトップ選手が使って常にリザルトの上位に名前が連なっていました。今で言えばBoomerang10とかENZO2とか、そんな位置づけになるでしょうね。
綺麗な作りの機体
この元祖PHANTOMですが、何がそんなに良かったか?と言うと
当時の機体にしては滅茶苦茶綺麗に丁寧に作られていて、特にトレーリングエッジがブレークコードを引いても綺麗に整形されていた
と言うことだったと思います。
写真のPHANTOMは右側のブレークコードを引いていますが、引かれた側は綺麗に折れ曲がっていますよね?
これは今でこそ当たり前の話ですが、1990年代前半はそうではありませんでした。
この写真はファルホークのAPEXかな?と思いますが、トレーリングエッジを見てください。一見綺麗に引かれているようですけどギザギザになっているのが分かりますよね?
これが普通だったんですよ。この当時は。APEXはまだマシな方だと思います。
NOVAのPHANTOMは、翼の作りがとても丁寧でトレーリングエッジの引かれ方も美しいため、空力的にも有利だったのではないか?と言えます。
印象は「危ない機体」
そんなPHANTOMですが、正直私個人の印象は
危ない機体
でした。
何しろ、当時の私はまだまだ講習生でしたし、その後もこのPHANTOMに乗ったことはありません。なので、乗り味などについては全く語ることはできませんが、尖った翼端や剥き出しのコンペラインなど
見るからに危なそうな機体
であることには変わりありませんでした。それに、当時もよく落ちていました。
と言っても、それはPHANTOMに限らずですが、この頃のパラグライダーはレスキューを開いたりツリーランしたりと言うことは
ほぼ日常
に近かったように記憶しています。さすがにレスキュー開傘を日常と言うのは語弊がありますが、それでも年に数回は大会などで目撃していました。
立山エリアでも数人が乗っていましたが、良い飛びはしてましたけどおそらく
相当神経をすり減らしながら飛んでいたんじゃないか?
と思っています。まぁ、機体のレーティングが
初級機>中級機>上級機(コンペ機)
と言う曖昧な時代ですから、P証を取得したらみんなコンペ機に乗る・・・みたいな時代なので怖い目にあうことも多かったのですね。
なので、私はPHANTOMのイメージが悪すぎて
PHANTOM=NOVAは危ない
と言う認識が刷り込まれ、自分がVERTEXと言うNOVAの機体に乗ることになるまでは絶対に選択肢に入らないメーカーの一つでした。
イメージ刷新の新PHANTOM
新しいPHANTOMは、そんな元祖のイメージを完全に払拭しつつ、高性能で扱い易いと言う面では今のNOVAを象徴するフラッグシップモデルと言えるのでしょうね。
20年以上の時を経て蘇ったPHANTOMですが、アスペクトが4程度だったものが5になり、安全性もコンペモデルからEN-Bと言う誰もが乗れるクラスになって復活したのはNOVAのポリーシーを感じます。
コンペから撤退して10年以上が経ち、その間に多くの一般パイロット向けの機体を世に出してきたNOVA。その集大成がこの新しいPHANTOMなのかもしれませんね。
パラグライダー回顧録(11.昔のファントムってどんな機体?)3 thoughts on “”
懐かしい機体の話が出ていたのでコメントさせていただきます。私は、初代PHANTOMの後期型を4本ライザーに変えて、フラップとアクセルを付けて飛ばしていました。ライズアップの際、すこしでも傾けると悲惨なことになるのと、ラム圧が高すぎてBストールがし辛い以外は、パーフェクトに近い機体だと思っていうす。同時期にAPEXを購入した友人がいましたが、APEXが山の裏に飛ばされる状況でもグイグイ前に進みますし、APEXが旋回の度に翼が折れてしまう様な状況でも、PHANTOMはビクともしませんでした。これには、同じエリアで飛んでいた人達もビックリしたそうです。そんなPHANTOMが危ない機体として認識されているのは何故か?因みに、私自身も購入するまではそんな認識でした。
ここからは私の見解です。当時、日本の代理店は、浮きを重視して大きめの機体を売っていました。もう数値まで覚えていませんが、その代理店(今も変わっていませんよね?)がカタログに載せていた適正体重は、本国のものと明らかに違っていたのです。そこで、当時お世話になっていたショップと相談し、代理店が勧めるサイズより一つ落としたところ、抜群の安定性と速度を持った機体を得ることができたのです。
多賀さん、コメントありがとうございます。
なるほど。当時は確かに大きめのサイズに乗るのが主流と言うか、そんな感じでしたね。立山で開かれるコンペでも、デカいサイズにバラストを持って辛そうにテイクオフして行く選手をよく見かけました。
やはり適正な翼面荷重で乗ることが大事ですね。私も重めで乗るのが好きなので、今の機体も上限で乗っていますが、当時は浮き重視ってことだったんでしょうね。
これ以降、スフィンクスくらいから少し見る目が変わって行きましたが、まさか自分がNOVAに乗るとは思いませんでした。でも、乗ってみたら良いグライダーでしたし、良いメーカーでした。パペッシュとトニーベンダーが頑張ってましたからね。
また昔の機体で記事を書こうと思いますので、今後もぜひ個人的見解をお聞かせいただければ幸いです。
コメントいただきありがとうございました。
phantomはapexが出た次の年、apex-mr時代の機体です。
当時は日進月歩だったので、安全性も性能も違って当然ですよね。
apexは当時としては画期的に高性能でした、エルドカのトリエール時代。
浮きが良く滑空費が良く、ソアリングがまともにできる時代の幕開けのコンペ機。
でも安全性は当時のコンペ機なので当然悪い。
apex-mrはそれを反省した安全性を追求した中上位機。
高速性能を抑え、潰れに強くした機体で、コンペ機では無くなったですね。