「ファイターパイロットへの道」の第9回目です。
ここまでの連載をざっと振り返ってみると
- フライトプランが基本
- 基準を作る
- 上達することとは
- 機体コントロール技術
- フライト中の思考
- 不安について
- 気象観察
と言うことについて話をしてきました。基本的なことを中心にした「基礎編」とでも言っておきましょうか。
今回は基礎編の最後にあたりますが、「準備と行動」について考えてみたいと思います。
準備と行動について
何事も準備が大切であることは言うまでもありません。大会に限らず、普段のフライトにおいても飛ぶための準備ができているかどうかでフライト自体も大きく変わってきます。
例えば、テイクオフに居ながら何の準備もしていないパイロットと、いつでも飛べるように準備しているパイロットでは、コンディションが良くなって出たいタイミングで出られるのは当然のことながら
準備できているパイロット
と言うことになりますね。コンディションが良くなってから準備をするようでは、その分行動が遅れてしまいますし、狭いテイクオフの場合では出たいパイロットが集中して待たされてしまうことにもなります。
テイクオフには飛ぶために来たはずですから、よほど条件が厳しくて機体をザックから出せないような状況でない限りは、いつでも飛べるように準備をしておくべきだと思います。
特に、昨今のフライト装備は電子機器が多く、電源を入れたりアプリを立ち上げたり、バッテリーを確認したり、あるいはタスクを入れたり・・・と、実にやることが多くなっています。大会に参加するとなればなおさらのことです。それでなくとも、テイクオフでは今日の条件を予測するために気象状況をしっかり観察したり、飛びなれないエリアであれば周囲の状況を観察したりと他にもやらなければならないことがたくさんあります。ですので、フライトできる状態にしておくと言うのは最低限のことだと思って日頃から準備する習慣をつけてもらいたいと思います。
手順も重要
準備をする上で気を付けなければならないのは
いつも同じ手順で行う
と言うことです。やることが多い場合には、つい自分の思いついたことや目についたことから先にやってしまいがちですが、空を飛ぶと言うこと自体がリスクのあることですから、ミスは許されないと思ってください。
そのミスをいかに起こさないようにするか?と言うことを考えると
いつも同じことを同じ順番で行う
と言うのが大切になります。そうすることで習慣化しますし、違った手順で実施してしまった場合や抜け漏れがあった場合は
いつもと違う違和感
を感じて気づくことができます。これは、機材などの準備だけでなく、例えばハーネスを装着する場合においても
- 右肩で背負ってから両肩に
- 右足のレッグベルトを着ける
- 左足のレッグベルトを着ける
などのように手順が決まっていることが望ましいです。私自身も毎回同じようにハーネスを装着しますし、テイクオフの動作についても同じように行います。クロスハンドの場合でも方向は決めてあるので毎回同じ方向に振り返ります。
このように行動することで、ミスが発生する確率は小さくすることができますし、先ほども言ったようにミスがあった場合にも気づきやすくなりますから、まだ実践していないと言う方はそのように改めてもらいたいと思います。
準備を早くする工夫をする
準備をより早く行うためには工夫することも必要です。
大会に参加している選手は、いつも機体とハーネスを繋ぎっぱなしにしている方が多いです。大会では、テイクオフで機体をチェックしたりハーネスに繋いだりするような場所がないかもしれませんし、そんな時間もありません。ゲートが開けば一刻も早く飛び立ちたいと言うのが選手の心理です。そのため、機体を畳んで収納する際には入念にラインチェックを行ったうえでハーネスと一緒にザックにしまうのですが、その時も毎回同じようにしまっているはずです。そうすることで、大会のテイクオフではザックから機体を出すだけで、必要最小限のチェックで飛びたてる準備が完了できるのです。
ただ、この繋ぎっぱなしは大会だけに有効な訳ではありません。普段から実践することで多くのメリットがあります。
例えば、テイクオフの風が強めの場合なんかを思い浮かべてください。そんな状況下で機体を広げ、ラインチェックを行い、機体をハーネスに繋ぐ。でも、機体を広げただけで風に飛ばされたり、機体が裏返ってしまってラインチェックどころではなかったり・・・と言った場面を見たり経験したことはありませんか?
そんな場合でも、機体とハーネスが繋がっていれば、ラインを目一杯伸ばした状態で機体を広げ、ハーネスにテンションかかかる状態にしておけばラインチェックすることができます。
それもできないような風の場合であっても、機体の中央部分のエアインテークを露出させて機体を開き、コントロールしながらラインチェックを行い、問題なければそのままテイクオフする・・・と言うテクニックも使えます。誰もサポートがいなくても一人でテイクオフすることができます。
もちろん、これは相当訓練した技術のあるパイロットでなければ危険となる場合もあるので勘違いしないようにしてください。グラハンなどでみっちりと訓練していれば、このような状況でも対処できるようになるのです。
それ以外にも、無線の電池や各機材のバッテリーは前日に自宅で新しいものに替えたり、しっかりと充電しておくなど、ここでもテイクオフで余分な仕事をしなくて済むようにしておくことも重要です。
いつも同じ行動をとる
くどいようですが、とにかくいつも同じ行動をとることがとても大切になります。普段のフライトも大会も関係ありません。毎回同じ行動です。
ただし、大会に出ようと思っている方は
大会に出た時と同じようにする
と言うことが求められます。大会の方がテイクオフで行う仕事の量が多いですし、考えたり注意したりすることが増えますからね。それと同じようなことを普段から行っておけば
大会だから特別なことをしなければならない
と言う事態は避けられます。また、ミスはこの
普段と違うことを行った時
に起こるものなのです。
Team-Cでも、基本的な行動は大会基準です。例えば
- 朝は9時からスクール事務所でブリーフィング
- 10時00分にテイクオフに集合しブリーフィング
- 11時00分にゲートオープン
などと言う具合にです。
それぞれの考え方があり、それぞれの機材の特徴もあるかと思いますが、それらも含めて行動を決めて実践し習慣化させることで、必要な準備を素早く間違いなく行うことができるようになります。そうすることでミスを防ぎ、テイクオフでの時間的な余裕と精神的な余裕を生み、より周囲の観察ができるようになることでしょう。さらに言えば、仲間にダブルチェックしてもらえば完璧です。
準備の遅い人は良い選手にはなれないと思いますし、良い結果を残すことも難しいと思います。段取り八分と昔から言われますが、まさにその通りだと思いますね。