「ファイターパイロットへの道」の第11回目です。
いろいろな方から感想をいただいております。ありがとうございます。
中には「ペースが速すぎて読むのが大変」と言う方もいらっしゃるようですが、ご安心ください。
少しペースを落としてゆっくりとアップして行こうと思っています。
さて、前回は「長く飛ぶ」と言うことについて話しました。継続的に訓練することで3時間くらいは普通に飛べるようになりますので、じっくりと取り組んでもらえたらと思います。
今回は一歩進めて「タスクをまわる」と言うことについて考えてみたいと思います。
タスクをまわるということ
パラグライダーの競技で「レース」に参加する場合には、この「タスク」と言うものをまわらなければなりません。
タスクと言うのは
TO-A-B-C-A-B-C-F-GOAL(20.5Km)
と言った具合に、予め定められたポイント(Waypoint、ターンポイント)をまわってくる飛行コースのことを言います。レースでは、そのゴールまでに要した時間を評価して優劣をつける訳ですが、条件によってはゴール者がおらず飛行距離だけで順位が決まるケースも発生します。これは以前にも述べたとおりです。
今回の話では、あくまでゴールすることを前提に話を進めて行きます。
タスクに慣れる
普段のフライトでタスクのようなコースをまわることはあまりないかもしれません。思いつきで
「あそこまで行ってみよう」
とか
「次はあそこに行けそうだ」
と言った、今の高度や条件によって行先を決めることが多いのではないか?と思います。
タスクは予め決められた飛行コースになりますので、途中で条件が変わろうが行ってこなければなりません。どれくらいの高度が必要だとか、行先の条件はどうだとか、自分の基準や観察力を発揮しなければタスクをまわることは難しいでしょう。それらは既に事前にやるべきこととして述べていますので、繰り返し訓練してもらいたいと思います。
そうして、タスクと言うものをまわることに慣れていくことが重要になります。そうすることで、普段のフライトも競技でのフライトもやるべきことや思考と言うものが共通化され、自然にタスクに対するフライトの考え方が身に着くようになるでしょう。
まずはゴールすること
ご自分のエリアでタスクを作ってまわることになると思いますが、まずはゴールすることに努めてください。途中で降りることもあるでしょうが、ゴールする(完走する)ことが重要です。その意味では、最初はあまり長いタスクや難しいタスクを組むのではなく、比較的短め(実距離で15Km~20Kmくらい)のタスクが良いと思います。ゴール出来るまでそのタスクにチャレンジし続けてください。そして、タスクをまわり終えた後で必ず
タスクの振り返りを行う
と言うことが必要です。ゴールできなかった場合はもちろんですが、ゴールできた場合も同様です。
ゴールできなかった場合は
なぜゴールできなかったのか?
について、徹底的に原因を考えてください。低い高度で次のターンポイントへ行ったとか、条件が弱くなったとか、いろいろ原因はあると思います。ここで、絶対的に守ってもらいたいのは
他責にしない
と言うことです。例え途中で条件が悪くなったとしても、それは事前に考えた条件の読み違えであったり、観察不足であったり、なにがしかの問題があった可能性がありますので、それらを全て
自分の問題
として捉え、決して条件やその他のものの責任にしないようにしてください。
パラグライダーは、他責にしようと思えばいくらでもできてしまうので、意識して自責として捉えるようにしましょう。
ゴールまでの所要時間を考える
タスクに慣れてゴールできるようになったら
ゴールまでの所要時間
を分析してください。20Kmのタスクに1時間かかったのであれば、あなたのタスクをまわるスピードは
タスク速度:20Km/h
と言うことになります。毎回同じではないと思いますが、まずは自分のタスク速度がどれくらいなのかを把握しておきましょう。これは、タスクを変えても同じことを常に確認するようにします。単純なタスク(尾根上を行き来するようなタスク)ならば、タスク速度は速くなるでしょうし、難しいタスク(沖だしなどの上げ直す回数が多くなるようなタスク)では、タスク速度は遅くなることになるでしょう。そう言った様々なケースでタスク速度を把握して行きましょう。
目標タイムを決める
次にすべきことは
タスクをまわる目標タイムを決める
ことです。タイムの決め方はいろいろですが、大会のリザルトを見ればトップ選手のタスク速度がわかりますから、それらを参考にしながらも、今の自分のタスク速度も考慮に入れて現実的な時間を設定するようにします。
日本のトップがタスク速度30Kmだったとしても、自分が18Kmしか出せてない場合は30Kmではなく、20Kmや25Kmなどの現実的な時間を目標として設定します。
そして、その速度でタスクをまわった場合の所要時間を割り出してください。
- 20km=1時間
- 25Km=48分
- 30Km=40分
と言う感じですね。これを目標タイムとして設定し、自分がゴールしたフライトと比較して振り返るようにして行きます。この場合、ターンポイント間に要した時間もチェックして行きます。そうすることで
- どこで時間がかかったのか
- どんな状況に時間がかかるのか
と言うことがわかりますし、それが自分の弱点であり課題であることが明確になります。それを繰り返し実践することで、自分のフライトを目標タイムに近づけるように改善して行きましょう。
私の取り組んだこと
最後に、私が昔取り組んだことを紹介します。
私はエリアで「セルフコンペ」と言うタスクをまわって訓練していました。27Kmくらいのタスクだったのですが、沖だしも含まれた当時としてはテクニカルなものだったと思います。これを「1時間以内にまわる」と言う目標を立てて取り組んでいました。そのために実践したこととして
- ターンポイント間の距離に応じて絶対必要時間を算出
- 絶対必要時間を積算して1時間が切れるか検証
を行いました。絶対必要時間と言うのは、物理的にこれだけの時間は絶対にかかると言う概念で、例えばパラグライダーの速度を時速30Kmと仮定した場合に5km移動するには「10分必要になる」と言う考え方です。ただし、これに風の影響は考えていませんのでご注意ください。
こうして行くと、ターンポイント毎に到達しなければならない時間(時刻表とでもいうべきか)がわかります。3つ目のターンポイントを15分以内でまわっていないと1時間が切れないとか、そう言う目安が作れます。それらを元にフライトプランを作り、どこでどれくらいまで上げて移動するかなどを細かく決めてタスクをまわることを繰り返しました。
そうすることで、タスクをまわる上での時間を決定する要素がハッキリしますし、上げ渋った場合の挽回策なども考えられるようになりました。さらには、上げるスピードが占める割合が大きいことに気づいたり、高度のマージンもどの程度が無難なのかも体感でわかるようになりました。
考えるべきことはこれ以外にもたくさんあるのですが、こうしてタスクをまわることによって
- レースに必要な時間的要素を構成するもの
- それらを改善するための理論や技術
を知ることができ、改善することができるのではないか?と思います。
まずはタスクをまわって慣れることを実践し、それから時間的な目標を持って速度を上げる訓練に移行する・・・と言う手順でファイターパイロットを目指してみてください。