立山エリアで飛び始めて26年が経ちました。
そして、2018年6月22日に初めて立山の前衛の山として知られる「大日岳(だいにちだけ・標高2,501m)」に行き、エリアまで帰ってくる
大日岳アウト&リターン
に成功しました。これまでに何度も妄想し、夢を見た北アルプスへの飛行が実現した瞬間でした。
この日のフライトで感じた立山エリアの可能性について考えてみたいと思います。
大日岳へのルート
まずは、今回成功した大日岳アウト&リターンを振り返ってみます。
この日は朝から良い天気で、スカイ情報などの気象予想データでも雲低高度が1,700mなどと高めの予想をしていました。比較的さわやかな風の中、10時50分頃にテイクオフし、最近ではエリア内とも言える標高2,090mの鍬崎山へ平日組のみなさんとアタックし、鍬崎山周辺で最高高度2,350mを記録しました。本当は有峰湖方面を攻略したかったのですが、南下するも上がるムードが乏しいため断念。2,000m以上の高度を保って美女平から対岸の大辻山方面へ飛行することにしました。
大辻山の東側に良好な積雲があったので、その下に付くと安定したサーマルで雲低の2,400mまで簡単に上昇。いつでもクロカンに行けそうな高さになり、一緒に飛んでいた東さんや吉田さんからは
「回収しますからクロカンに行くならどうぞ!」
と優しいお言葉。しかし、北から北東方向の海側を見ても雲は散発的で不安定。行けば行っただが、あまり意味のないフライトになりそうだったので、それよりも東側に出来ている雲を使って北アルプス方面を攻めた方が有意義な気がしたので
「今回はやめておきます。それより東側に行ってみます」
と無線を入れて東進を開始。そうは言っても最初は称名滝を真横上空から眺められれば良いかな?程度のノリだったのですが、関沢校長から
「東へ行くなら大日岳をトップアウトよろしく!!」
と言うニュアンスの無線が入り、弱気な気持ちだったスイッチを切り替えて大日岳を目指すことに。
早乙女岳で強烈サーマル
東進を開始してから徐々に高度を消費して行きましたが、ちょうど雑穀谷の上空あたりに差し掛かった頃に強烈なサーマルをヒット。
雲があったので狙って行ったのですが、予想どおり急峻で南面の面積が多いこの谷は、おそらくサーマルの出ている可能性が相当高く安定感のある地形かと思います。サーマルが強烈なので、機体コントロールに集中しましたが、ここで2,600mくらいまで上昇できました。この位置ではこの高さが雲低ギリギリと言ったところ。
次のピークである早乙女岳へ機首を向けて移動を開始。早乙女岳付近にもしっかりとした積雲が形成されており、その先の大日岳へアプローチする道を開いてくれています。ここでも予想どおりにサーマルをヒットし2,700mあたりをキープしながら眼下に捉えた大日岳にアプローチしました。
大日岳にもサーマル
大日岳上空にも積雲があり、目線で大日岳へ到達する頃にサーマルヒット。そのまま2,800m+まで上昇して雲低へ着くことができました。足元には大日岳と大日小屋が見えます。奥大日付近にも雲があるので、あそこまで行けば上げ直しは容易そうでした。
本当ならば、その時の画像などをお見せできたら良かったのですが、こんな日に限ってカメラ一式を家に置き忘れると言う残念な結果となっています。ちょっとアングルは違いますが、こんな感じで大日岳から奥大日方向が見えたはずです。
大日小屋を過ぎると右前方下には地獄谷、その奥に室堂が見えます。正面には大汝山、左前方には剣御前。この日は改めて立山エリアは山岳エリアだと言うことを感じるとともに、この景色が今現実であり、自らのパラグライダーによってここまで来れたことに感動していました。
しかし、この先は風向きが変わり気流が荒れてきたため、無理をせずにエリアへ生還することを最優先に帰路に着きました。2,900mからのグライドは大変気持ちよく、美女平に着いても高度は2,000mオーバーで、粟巣野上空で-3以上のシンクに入ったので、これを利用して一気に高度を下げて無事にランディングできました。
写真は大日岳方向からエリア側を見たものです。(関沢校長のFBより拝借)
対岸ルートの可能性
今回飛行した対岸からのルートですが、これまでは称名川の谷が大変狭く降ろす場所が無いなどのリスクがあったために基本的には「飛行禁止」にしていた領域になります。それもあって、これまで誰もこのルートで飛行した実績はなく、あるのは大日まで登山してからフライトするなどに下山フライトのみでした。
しかし、今回実際にフライトして感じたのは
このルートは北アルプスアプローチの定番ルートになる
と言うことでした。
大辻山でキッチリ上げることができれば、稜線を伝って雑穀谷の尾根に向かうことになります。ここはかなりの確率でサーマルが発生していると思われますので、十分な高度さえ確保できれば比較的容易に行くことができるのではないか?と考えられます。
画像はGoogleマップの衛星写真を切り出したものですが、実際の大日岳方面の写真も見てみましょう。
ガッチリと風を受けていかにもサーマルがありそうな地形ですので、際どい攻め方さえしなければ高確率で早乙女岳までは行くことができるのではないか?と言うのが私の印象です。
北アルプスプロジェクト
今回のフライトから、本当にこれまで夢や妄想でしかなかった
エリアから北アルプスまで飛ぶ
ことの可能性が広がりました。また、その先の
北アルプスを越えて白馬側へフライトする
と言うまさに妄想でしかないバカげた夢が実現する可能性があることがわかりました。
とは言え、やはりリスクのあるアドベンチャーフライトに属するものであることに変わりがないため、これまでの印象をより確実なデータとして蓄積できるように
北アルプスプロジェクト
を立ち上げて、まずは大辻から東側の早乙女山までのルートとサーマル状況の調査、その後は大日岳から奥大日辺りまでの調査とフライトの実績を積み重ね、いずれは北アルプス稜線までのフライトや、その周囲をフライトして帰ってくる可能性などを調査したうえで、最終的に北アルプスを越えて長野県側まで飛んでいくことを目標に活動して行きたいと思います。
これには条件が限られてきますが、これから太平洋高気圧に覆われた夏の午前中などは調査フライトができるのではないか?と考えています。
エリアのみなさん、その節はご協力をお願いいたします。